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EYC通信 #37

随筆「海の言葉」㉙“DERRICK”と“CRANE”

フランス革命を血で彩った、あの有名なる「首切り機械」“ギロチン”の名称は、その発明者、J.I.GUILLOTINの名前に由来しておりますが、われらの船の荷役機械“DERRICK”にも、ややこれに近い由来があります。

“ギロチン”発明の約200年前、17世紀初頭の英国では、死刑は専ら絞首刑でありました。その当時、ロンドンに、“MR.GODFREY DERRICK”なる有名な死刑執行人がおり、彼の名前の“DERRICK”が、“HANGMAN”(絞首刑吏)や“GALLOWS”(絞首台)の代名詞になってしまいました。偶々その頃発明された「揚貨装置」まで、その形が絞首台に似ていたので、“DERRICK”と呼ばれるようになってしまったのです。

最近の船では、“DERRICK”を見ることは少なくなりました。大体どんな物かはご存じでしょうが、正確に何が“DERRICK”なのか、意外とはっきりしません。“DERRICK BOOM”は、貨物を吊るための太いブームです。“DERRICK”は「揚貨装置」ですから、一連の装置の総称であって、“DERRICK BOOM”は、“DERRICK POST”、“DERRICK TABLE”、“WINCH”、“CARGO GEAR”などと同じく、DERRICK”の一部分であると言えます。ところが実際には、最も目立つのがこのブームですから、一般に“DERRICK”と言えば、この“DERRICK BOOM”を指すように思われます。船の要目表でも「5tデリック10本、5tウインチ10台」と言うように表現しますし、専門書にも、「デリックを吊る」などとありますので、狭義には、“DERRICK=DERRICK BOOM”としても誤りでは無いようです。

昔の雑貨船の“DERRICK BOOM”は、二本で一組となっており、一本はハッチ上に、もう一本は舷側に固定して、それぞれの“BOOM“の先端から出る“CARGO FALL”(荷役用ワイヤー)を結び合わせ、その結び目から貨物を吊ります。貨物が舷側とハッチの間を空中で横に移動する時は、二本の“FALL”が荷物を奪い合うような格好になるので、「けんか巻き」と呼ばれました。英語ではもっと優雅な表現で、“MARRIED FALL SYSTEM”です。この“MARRIED(MARRY)”は日本語では「ケッコン」ですが、船乗り用語では、ロープなどをつなぎ合わせることだそうです。

最近の船では、“DERRICK”の代わりに、“CRANE”が装備されることが多くなりました。何故か日本では「グレーン」とか「グレン」とか、濁って発音することが多いのですが、勿論「クレイン」が正しいのです。“CRANE”は鳥の「鶴」のことです。本船のデッキ上に立ちならぶ“CRANE”は、確かに「鶴」を思わせる姿です。ところが、“CRANE”の仲間には、「鶴」などとは似ても似つかぬ形の“GANTRY CRANE”や“TRAVELLING CRANE”もあります。構造的に見れば、「鶴」に似たものは“JIB CRANE”と呼ぶのが正しく、また、いわゆる“DERRICK”も“JIB CRANE”の一種であって、“DERRICK CRANE”と呼ぶのが正しいそうです。「死刑執行人」や「鶴」の血統書も、いろいろ難しいものです。

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