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EYC通信 #53

随筆「海の言葉」㊳“AVERAGE”

“AVERAGE”

「バッティングアベレージ」は野球の「打率」であり、“AVERAGE
SPEED”は「平均速力」です。“THE AVERAGE MAN”と言えば、
「普通の人」を指します。
このように、日常の英語の“AVERAGE”は、「平均」とか「平均化する」ことなのです。

海事用語としての“AVERAGE”と言えば、すぐ思い浮かぶのがG/Aつまり“GENERAL AVERAGE”「共同海損」です。
荷物を積んで航海している船が、危険に遭遇し、やむをえず積荷の一部とか船体の一部を犠牲にして危機を脱することがあります。積荷の一部を海に捨てること、“JETTISON“「投荷」はその代表的な例です。
このような時に、犠牲にされたものだけが損害をこうむるのはでは不公平になりますから、その犠牲のおかげで助かったものにも損害を分担させるような取決めになっております。
G/Aであることが宣言されると、“AVERAGE ADJUSTER”「共同海損精算人」により“G.A.DISBURSEMENT”「共同海損諸費用」が算定され、船体及び積荷の「価格」に応じて「按分分担」を割り当てられます。
この「共同海損分担金」は“G/A CONTRIBUTION”と呼ばれます。

このようなG/Aのシステムは、西洋においては紀元前14世紀、フェニキア人の時代から慣習化され、ローマ時代には法律として明文化されました。
一方、日本でも、本邦特有の海商法である「回船式目」(1223年)に、同様の趣旨の規定があります。
現代では、世界中の殆どすべての国の法律に、この原理が取り入れられていますが、考え方や処理の方法にはかなりの差異がありますので、別途に“YORK-ANTWERP RULES”という国際的な規則が制定されて、国際的な海上運送に関連のある契約には、この規則を適用する旨の条項が必ず入れられております。

このように、犠牲にした損害を“AVERAGE”「平均按分」するから、
“GENERAL AVERAGE”と呼ぶのだと思いがちですが、語源的に見ると、これは全く逆なのです。
”AVERAGE”の語源は、スペイン語の“AVERIA”、イタリア語の“AVARIA”であって、これらはいずれも「海難によって生じた、積荷や船体の損害」即ち「海損」を意味します。
英語でも“AVERAGE”は、まさに「海損」であって、そのうちで、前述の如く「平均按分」されるべき性質のものが“GENERAL AVERAGE”となります。それ以外のもの、つまり「所有者が負担すべき海損」は、“PARTICULAR AVERAGE”「単独海損」と呼ばれます。船舶の売買契約の中に、“FREE FROM AVERAGE”という条件がありますが、これは「未処理の海難事故は無いこと」です。

このように、“AVERAGE”は本来「海損」のことなのですが、その中で“GENERAL AVERAGE”が損害を「平均按分」すると言う点で極めて特徴的であったために、18世紀の頃から“AVERAGE”が、「平均する」意味に使われるようになったのだそうです。
海運人としては、“AVERAGE”あくまでも「海損」の意味に使い、
「平均」の場合は、“MEAN”を使う方が良いのではないでしょうか。

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