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EYC通信 #55

随筆「海の言葉」㊵“SPRING”

“SPRING”

“SPRING”「春」は、中学一年生で習う単語ですが、海事用語としては変わった意味に使われます。

“SPRING TIDE”は「大潮」のことですが、よく「春の大潮」と訳されているのをみかけます。
潮干狩りは陰暦3月3日を以て好機とするとのことで、春先には特に大きな潮があるような気がしますが、潮汐表を見てみると必ずしもそうでは無く、東京湾などではむしろ夏から秋にかけての方が潮が大きくなります。
ご承知の通り、「大潮」とは「満月」や「新月」のあと2/3日の間に
潮の干満が最大になる現象ですから、「春」とは特に関係は無いようです。

“SPRING”には「水が湧く」の意味があり、転じて「泉」ともなります。“SPRING TIDE”も「春」では無く「泉」から発したものでしょう。
「潮の干満」は“EBB AND FLOOD”です。
「満潮」“FLOOD TIDE”は、“RISING TIDE”とも言います。
“RISING”とは「水位が上がる」ことです。
「大潮」の反対の「小潮」は“NEAP TIDE”です。この“NEAP”と言う言葉は、これ以外の意味がまったく無い、いわば孤立した特殊な言葉です。

水深測定の為の基準水面の定め方は、国によって異なっております。英国で専ら使われる基準水面は“INDIAN SPRING LOW WATER”です。
英語では“INDIAN SUMMER”「小春日和」など“INDIAN”のつく言葉が沢山あります。しかし“INDIAN SPRING”は辞書に見当たりません。
この“INDIAN SPRING LOW WATER”は、昔英国が印度洋の海底測量を行った際に、その基準として採用した水面の高さだそうです。

“SPRING”には「バネ」「反動」の意味もあります。船の「もやい」の一種である“SPRING LINE”は、恐らくこの意味から出たのでしょう。岸壁に係留する場合、小さな船ならば「船首索」と「船尾索」の二本だけで良いのですが、大きな船ではこれでは足りないので、船首や船尾に各々何本か取るほかに、船首後方に、船尾方向に引っ張るように、逆方向に「もやい」を取ります。これが“SPRING LINE”で、
「斜舫索」「ななめもやい」と呼ばれます。

岸壁設備など無かった時代にも“SPRING LINE”と言う名称はありました。その頃は専ら錨索から船尾に取った補助策のことであったのです。錨泊中の船は、普段は船首から風を受けて「風に立った」状態にあるのですが、この“SPRING LINE”を引けば、船の方向が変わって船横から風を受ける格好になります。
当時の軍艦の大砲は、左右両舷にだけ装備されており、船首や船尾の方向に射撃できません。したがって錨泊中に風上や風下から敵が来た場合は“SPRING LINE”を操作して舷側を敵に向けて射撃することが必要だったのです。
また、錨泊中の帆船が、緊急に帆走を開始しようとする場合にも、この“SPRINGLINE”の操作は非常に有効だったようです。

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