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EYC通信 #60

随筆「海の言葉」㊸“DOG”

“DOG”

 

“DOG”「犬」を船の上で探してみましたら、意外にたくさん見つかりました。
しかし、正直に申せば、この「犬達」の大部分は極めて特殊な種族で、中には絶滅したり、呼び名が変わったりしているものもあり、本に書いてある説明だけではわからない部分も多いのです。
或いは間違いがあるかも知れませんがお許しください。

船には随所に「「水密扉」“WATERTIGHT DOOR”がありますが、この扉を壁面にしっかり締め付ける為の「ハンドル金具」が“DOG”です。壁面の「留金」に「咬みつく」ように締めるので、この名称ができたものでしょう。

また、木材などを動かしたり、吊ったりする時に、先が曲がった鉄製の釣金具を使いますが、これもやはり“DOG”と呼ばれます。

日常英語で“DOG”を動詞に使うと「(犬のように)尾行する」ことになりますが、船の上での特殊な作業にも“to dog“が使われます。

「もやい綱」などの「太いロープ」を「ウインチ」で巻き込んでから、デッキ上の「ビット」などに固定しようとすると、一度ウインチから外さなければなりません。この時に、ロープを緩ませないために、「細い紐」が船首や船尾のデッキ上に、一方の端を固定して準備されてあります。この「細い紐」を、「ロープ」の「撚り」に沿って巻き付け、もう一方の端を引っ張れば、「ロープ」が緩まないのです。

「細い紐」を「ロープ」に「咬み付かせる」のが“to dog“であり、

「細い紐」は“DOG STOPPER”と呼ばれます。

船の上の、細々したもので、“DOG”の愛称がいくつか見受けられます。

マストのステー(支索)などに布切れや紐などを結び付けて、「風見」の役目をさせるのが“DOG VANE”。

小艇などのオーニング(布製のカバー)に、マストやステーを通す「切れ込み」が付いているのが“DOG’S EAR”。

羅針盤の布製のカバーについている「覗き窓」が“DOG CURTAIN”。小さな船のデッキ上の小屋が“DOG HOUSE”(犬小屋)。

ヨットなどで、キャビンの屋根がデッキよりも高くなっている部分も

“DOG HOUSE”と呼ばれます。

帆船が“REEF”「縮帆」すると、セールの一部に「たるみ」が出来ます。この「たるみ」を“DOG’S LUG”と呼びますが、この“LUG”が

“LUGSAIL”「四角帆」のことなのか、それともスコットランド語の

「耳」のことなのか、良く分かりません。

“DOG WATCH”は「折半直」と訳されます。

4時間毎に当直を個体していると、各人の毎日毎日の当直時間が固定してしまいます。これでは生活が単調になり、不公平も生ずるので、当直時間を「ずらす」ために一日に一回だけ当直時間を二分割して、2時間宛の「折半直」としたものです。

深夜の番犬に因んで“DOG WATCH”と呼んだとの説もありますが、英国流では、夕方の当直を「折半」するのが普通でしたので、この説はあまり信用できません。

当直時間を“DOCK”(切りつめ)した“DOCKED WATCH”だとか、当直時間を“DODGE”(そらす)ための“DODGED WATCH”であるとか、いろいろな説があるようです。

 

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