随筆「海の言葉」㊾“BUNKER”

“BUNKER”
「バンカー」と言えば、ゴルフコースに作られた、砂の入った「くぼ地」で、誰からも嫌がられる障害物です。正式には、“SAND BUNKER”ですが、外国では砂は入っていなくて、雑草だらけの“GLASS BUNKER”もあります。
スコットランドの海辺に作られた初期のゴルフコースには、家畜が強い海風を避けるための低い「くぼ地」があり、これが「バンカー」の原型であるとされております。
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“BUNK”は、「木箱」であり、「座席」であります。船乗りは「ベッド」のことを「ボンク」と言いますが、これは“BUNK”の なまりです。
“BUNKER”は、“BUNK”から発した言葉で、「保管する場所」が原意であります。
ゴルフのバンカーも、元来は家畜の「保管場所」であったのが、最近では、OBになりそうなミスショットをコース内に止めるための「保管場所」の意味もあるようです。
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船の“BUNKER“は、元来は「燃料用石炭庫」でありました。
同じ石炭でも、積荷は“CARGO HOLD”に積み込みます。もっとも、船によっては、同じ場所を“BUNKER”と“CARGO HOLD”に使い分けることもあったようです。
船の燃料が石炭から石油に変わって、“BUNKER”は、「燃料油タンク」のことにも使われるようになりました。
また、“BUNKER”を動詞にして、「燃料を積み込む」意味にも使うようになりました。
これにともなって、「燃料を積み込むこと」つまり「補油」「補炭」は“BUNKERING”と呼ばれることになります。
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船の燃料油のことを“BUNKER OIL”と呼ぶことがあります。
石炭の時代に、貨物炭と区別する意味で“BUNKER CARL”と呼ん
だのと同じ感覚でしょうが、国によっては、この、“BUNKER OIL”は日本での「C重油」を指すことがあり、注意しなければなりません。
“BUNKER OIL”を省略して、“BUNKER”を「燃料」の意味に使う人が多いのですが、これは明らかに間違いです。“BUNKER”には、「燃料」の訳語はありません。
実務上は、“BUNKERS”と、“――S”を付けて、「燃料」の意味に使っている例をしばしば見掛かけます。権威のある実務書にも使われておりますが、まだ正式の英語としては認知されていないようです。
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「ショートバンカー」と言う言葉が、よく「燃料切れ」の意味で使われます。
そもそも、“SHORT BUNKER”を直訳すれば、「燃料庫不足」であって、「燃料不足」ではないのですから、これもやはり日本製の英語としか思えません。
誤解を避けるためにも、使わないほうがよい言葉の一つです。
ところで、「燃料切れ」と「燃料不足」とはどう違うのでしょうか。
実際には、船の最後の一滴まで燃料を使い果たした例は見たことがありません。そうなる前に救援を求めます。とすれば、一体どの程度不足すれば「燃料不足」になるのか、難しい問題だと思います。