ENOSHIMA YACHT CLUB
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EYC通信 #71

安全・ルール部会 Episode2


「自艇を救う咄嗟のひと言」


          安全・ルール部会

         坊垣内 広明(Omoo)

           2026年5月3日




目 次

はじめに

1 咄嗟の対処を迫られるシチュエーション
  (1) 咄嗟の対処 ケーススタディー
  (2) 海軍での「待てっ!」
  (3) 咄嗟のひと声「待てっ!」の由縁

2 咄嗟の対処の事例
  (1) 体験記1 スノーケル主排出弁が開かない
  (2) 体験記2 砲弾が着弾しない
  (3) 大人なチームワーク

3 「待てっ!」は厄介
  (1) 「待てっ!」にまつわるエピソード
    ア 「待てっ!」と言えなかった人たち
      (ア) 衝突を止められなかったソーナー員
      (イ) 艦長を「裸の王様」にしてしまった乗員
    イ 「待てっ!」を遠ざけた人たち
      (ア) 「待てっ!」を無視して落命したステパン・マカロフ
      (イ) 「待てっ!」を回避するために猛訓練を強いた東郷平八郎
      (ウ) 「待てっ!」を待っていた山本五十六
  (2) 「待てっ!」が敬遠される理由
    ア 有難いけど鬱陶しい
    イ 止められる側の思い
    ウ 止める側の思い

4 「待てっ!」で艇を救うために
  (1) 「待てっ!」を機能させるための心掛け
    ア 止められる側
    イ 止める側
    ウ クルー相互
  (2) 「待てっ!」を機能させるための推奨事項
    ア 経験別
    イ 全員共通
    ウ (敢えて)艇長

おわりに




はじめに

南シナ海で、某国の船員が故意に自分の船を他国の船にぶつける映像を見るにつけ、あの船に乗っている人たちは、自分たちの船を傷付けて心は痛まないのだろうか?衝突を避けるための good seamanship は何処に行ってしまったのか?と暗澹たる思いに駆られます。
「人のふり見て、我がふり直せ」と言われますが、このようにシーマンシップが揺らいでいる昨今、我々ヨット界ではどうでしょうか?
ヨットも含めたプレジャーボートでは、仕事のような上下関係ではないため、所有者と艇長の関係とか、艇長と操舵手の関係が曖昧なまま出航して、危険が迫るまで、誰が回避方法を決めるのか判然としないケースも散見されるのではないでしょうか。
そういう思いから、ヨット乗りは自分たちをどのようなシーマンと捉えているのかネットで探ってみたところ、少々旧聞に属しますが、2001年にJSAFから国交省宛てに提出した小型船舶船長免許制度の新設に関する提言書を見つけました。
その中でJSAF提案者は、ヨット艇長の責任について以下のように述べているので、少々長くなりますが、引用させてもらいます。
(以下、原文のまま引用)
  ◆たとえ共同オーナーであっても、実際に乗る時には、艇長は1名決められるべきであり、
  ◆艇長に任命された時はその責任を自覚し、自分と乗員と船を合わせた総合力を過大または過小評価せ
   ず、冷静に判断して運行するのが艇長である。
  ◆仮に不足した知識が有れば それを補うクルーを乗船させることもできる。
  ◆それも不可能なら気象条件を考慮し、その範囲内で出航を見合わせたりもできる…。
(引用終わり)

そして、ヨットにおける艇長の実態について、

(以下、原文のまま引用※()内は筆者)
  ●本来は、船長の免許はその能力に裏打ちされたものでないといけません。
  ●現状では免許取得後、何年も乗船しない、乗っても年数回では、本来の船長の資格・職責を維持できる
   わけがありません。
  ●ヨット・モーターボートにおいては、実際の長年の経験と知識、人間的資質、海への適用性などから、
   免許取得者より下級資格者の方が有能である場合が存在し、
  ●(それによって)「資格者が1名乗っていれば良いという事態」を生じ、(船員)法の趣旨が小型船舶免許制
   度で曲げられる結果となっている場合も見られます。
(引用終わり)

と分析し、最終的に

■この構造的欠陥を少しでも排除するためには、乗船経歴の概念を小型船舶の免許にも導入したら如何かと考えます。
と提言しています。
この中で注目すべきは、艇長の責任に関する「たとえ共同オーナーであっても、実際に乗る時には、艇長は1名決められるべき」という認識と、現状について「免許取得者より下級資格者の方が有能である場合が存在する」と指摘(自白?)している点です。
「たとえ共同オーナーであっても・・・」と述べているのは、現状では、その日の艇長が誰であるか明確にしないまま出航している艇が存在することを暗に肯定しているにほかなりません。また、「免許取得者より下級資格者の方が有能である場合が存在する」のはヨット界では公然の事実でしょう。我々の周りを見渡しても、今日は誰が艇長なんだろう?と、責任の所在がはっきりしない艇もあるのが実情ではないでしょうか。
これから述べようとするのは、JSAF提案者が自ら認めるヨットにおける緩い指揮命令系統の下で、自分たちの船をみんなで守るために養うべきシーマンシップは何か、ということです。
前回の投稿では「危険の芽、無知と不注意、人任せ」というテーマで、セーラー個人の心構えについて述べさせていただきました。
本稿では、せっかく危険の芽に気付いたのに手遅れにならないために何を為すべきか?自分たちの船を傷付けないために如何に協力すべきか?をテーマに、チームとしての心構えについて以下の順序で述べさせていただきます。
  ① 先ず、皆さんが咄嗟の事態に遭遇した時にどのように反応されるか、いくつかのシチュエーションで疑
    似体験していただいてから、
  ② 私の黒歴史ともいえる、他の人にタイムリーにフォローして貰ったおかげで急場を凌げた体験を披露
    し、
  ③ 実際に咄嗟の事態に遭遇した際に適切に反応するのが難しい理由を抽出して
  ④ 咄嗟の事態にタイムリーに反応できるようになるために、クルーとして & チームとして取組むべきこ
    とを明らかにして行きたいと思います。
なお、文中に事例を引用した自衛隊艦船等の名称は、当事者にご迷惑をお掛けする恐れもあるため、それぞれ仮名称としております。

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1 咄嗟の対処を迫られるシチュエーション

ヨットに限らず、クルマや飛行機など乗り物に乗っていて、このまま続けたら危ないと気付く瞬間って、みなさん経験おありでしょう。そのタイミングのことをポイント・オブ・ノーリターンと言いますよね。
ポイント・オブ・ノーリターンに気付くタイミングは、ベテランと初心者では当然、時間差はあるでしょうが、ここでお話したいのは、この咄嗟の事態に気付いた時、あなたならどうする?ということです。

  (1) 咄嗟の対処 ケーススタディー
    さて、次のようなポイント・オブ・ノーリターンを見たり、聞いたりした時、あなたの五感センサー
    はどのように反応するでしょうか?
    ① 単軸右回りプロペラのモーターボートに乗船中、右舷からクルーが落水するのを見た艇長が、咄嗟
      に舵を左に切っているのを見た時
    ② 停車している自動車のすぐ後ろに幼児がいるのに、それを知らずにドライバーがバックしようとし
      ているのを見た時
    ③ 出港後、メインセールを揚げるために他のクルーが、わき目も振らずハリヤードを引いているが、
      ハリヤードのシャックルが外れかかっているのを見た時
    ④ クルマの助手席に乗っていて、ドライバーが一方通行の標識を見落とし、そちらに進入しようとし
      ているのを見た時
    ⑤ スマホを見ながら歩いている人が、車道にはみ出しそうになっているのを見た時
    ⑥ 他のクルーがお弁当のプラ容器を海に捨てようとしているのを見た時
    ⑦ 後進で離岸しようとしている艇長が、逆方向に舵を切っているのを見た時
    ⑧ ヘルムスマンが転舵した刹那、ジブセールの陰に衝突の恐れのある船舶を見た時
    ⑨ 急病人に救命処置を施している人が、AEDの使用法を間違えているのを見た時
    ⑩ 燃料タンクのそばで、誰かがタバコに火を点けようとしているのを見た時
    ⑪ オレオレ詐欺に引っ掛かったらしいおばあさんが、ATMから多額の現金を振込もうとしているの
      を見た時
    ⑫ 寿司屋で隣の客が、むらちょこ(醤油皿)にソースを注ごうとしているのを見た時
    ⑬ 居酒屋で酔っ払った美人が、ウーロン茶と間違えてハイボールをがぶ飲みしようとしているのを見
      た時
    ⑭ スピンネーカを張ってセーリング中、スピントリマーがアフターガイをクリートしたまま、スピン
      シートをウィンチで思いっきり引こうとしているのを見た時
    ⑮ ある日、ラジオ中継で総理大臣が、消費税を30%に引き上げると言っているのを聞いた時
    ⑯ ポンツーンで舫い取りをしているクルーのロープワークが間違っているのを見た時
    ⑰ 機走中に突然、エンジンの冷却海水が排出されなくなったのを見た時
    ⑱ レース中、ヘルムスマンが回航マークを指定方向と反対の方向に回ろうとしているのを見た時
    以 上

    ラジオの総理大臣会見を除いて、どの事例も、今すぐ止めなければならない事態ですが、あなたの五
    感センサーの反応は「危ない!」だったでしょうか?「やめろ!」だったでしょうか?「なにやって
    んだよー!?
」だったでしょうか?”

  (2) 海軍での「待てっ!」
    私が勤務していた海上自衛隊は、艦長を頂点にしたピラミッド型の指揮命令系統が確立されており、
    上意下達は不可侵のルールだろう!と捉えられがちですが、実は、ひと言で形勢を一変させる game
    changer として「待てっ!」という号令がありました。
    「待てっ!」と発するタイミングは、その動作をそのまま続けたら取り返しがつかなくなるポイン
    ト・オブ・ノーリターンであり、危険を察知した者は間髪を入れず「待てっ!」と発唱しなければ
    なりません。
    「待てっ!」と声が掛かったら、それが誰から発せられたものであっても、一旦、操作の手を止め
    て、艦長から次の「掛かれ」という命令が下るのを待つというのが不文律でした。(今も伝統として引
    き継がれていると思います)
    この「待てっ!」という号令は「鶴のひと声」というべき、咄嗟の事態を切り抜けるためのひと言で
    す。
    「鶴のひと声」は、会議などで議論紛糾している最中に社長や監督といった有力者や権力者が、他の
    人の意見を超越して結論を下す、といった場合に用いられることが多いようです。では、何故に鶴の
    声か?
    鶴の首は鳴管(めいかん)と呼ばれる発声器官が他の鳥より長く、発達しているので、鳴くと金管楽器
    のような大きな音を響かせることができるそうです。
    そもそも鶴は、進行方向に障害物などを感知すると、ひらりと身をかわして、余裕のある段階で危険
    を回避するため、ほとんど鳴声を発することはないそうです。しかし、本当に危険な状態に遭遇した
    時は、四方に響き渡る大きな声で鳴いて、周囲に危険を知らせます。
    こうしたことから、普段は鳴かない鶴が鳴くほど大変なことが起こっているということで、他の鳥ま
    でびっくりして静まり返るのです。ということで、本稿における「待てっ!」は、社長や監督の「鶴
    のひと声」よりも、本来の鶴の鳴き声効果の方に近いニュアンスの表現とご理解ください。

  (3) 咄嗟のひと声「待てっ!」の由縁
    咄嗟の事態を切り抜けるためのひと声が「待てっ!」となった詳しい経緯は審らかではありません
    が、想像するに大体以下のような理由ではないかと推察します。
    ①「危ない!」は、事態の危険性は形容しているが、当事者がどうするべきかについて指示していな
      い。
    ②「やめろ!」は、「待てっ!」と同等の効果を期待できるが、「待てっ!」よりも発する文字数が
      多く言い終わるのに時間が掛かる。
    ③「なにやってんだよー!?」は、自分の感情を爆発させているだけで、当事者がどうするべきかにつ
      いて指示していない。
    いずれにしても、咄嗟の事態を制止するためのひと声は、簡潔明瞭を旨として「待てっ!」とされた
    ものと思われます。

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2 咄嗟の対処の事例

「待てっ!」の由来と効用についてご理解いただけたところで、ここからは私の「黒歴史」ともいうべき体験を二つ披露させていただきます。

(1) 体験記1 スノーケル主排出弁が開かない
現在、世界の海軍には原子力潜水艦と電池潜水艦の2種類が存在しています。
違いは、原子力潜水艦は常時、原子炉を稼働して電気エネルギーを供給するのに対して、電池潜水艦はその名のとおり大量の大型蓄電池から電気エネルギーを供給します。このため電池潜水艦は、周期的にディーゼルエンジンなどにより駆動する発電機から充電しなければなりません。
今日では、空気を必要としないAIP(Air Independent Propulsion)システムや、高性能リチウム・イオン電池を搭載している電池潜水艦が主流ですが、ここでお話しするのは、現役当時のディーゼルエンジン搭載の潜水艦Iでの話とさせていただきます。
スノーケル航走は、潜ったままスノーケル給気筒と排気筒を海面付近まで上昇させて、給気筒頂部の頭部弁から取り込んだ外気を給気管を経てエンジンルームに供給し、エンジンの排気は排気管を経てスノーケル排気筒頂部の主排出弁から海水中に放出するという流れで実施します。
スノーケル航走中は、給気系と排気系の2系統のパイプラインを海水に曝す脆弱な状態になり、海水を被った時に対処が遅れると浸水し、悪くすると沈没の恐れもあるため、エンジンの排気圧力が海面付近の海水圧を上回らないと主排出弁は自動的に閉じる構造になっています。また、当然のことながら駆動中のエンジンが相当な騒音を発するし、給気筒や排気筒を海面すれすれの高さまで上昇させなければならないため、隠密性が低下して、最も敵から発見され易い状態になります。それを避けるため、敵の捜索密度が低くなる夜陰に紛れて充電を開始し、見つかる前に終了しなければならないので、毎回、ヨットでスピンネーカを揚げる時に「提灯にならないでくれ!」と願う程度に緊張を強いられます(実際は、もう少し切実かも?)。
その時も、全ての弁や圧力計が正常に作動していることを確認し、潜航指揮官である私が「スノーケル始め!」と号令して、いざエンジン起動! 1秒、2秒、3秒、排気圧力が上がり始めた・・・あれっ!?主排出弁が開かない!
マニュアルどおりにステージが進まず狼狽していたら、潜航指揮官を補佐する「油圧手(ゆあつて)」という役職の大ベテランが「待てっ!」と発してくれました。おたおたしていた私は、この「待てっ!」のひと声で我に返って「スノーケル止め!」と号令し、事なきを得ました。
主排出弁が開かなかった原因は、艦がうねりに揉まれて一時的に沈降して深度が深くなり、海水圧が排気圧力より高くなったためでした。トホホ
油圧手の冷静な「鶴のひと声」に感謝したことは言うまでもありません。

(2) 体験記2 砲弾が着弾しない
ドルフィンマーク(潜水艦乗り)になる前の任官後最初の艦艇勤務は、護衛艦の大砲を所掌する砲術長を補佐する砲術士でした。長崎県の佐世保所属の護衛艦Oで約1年間勤務して、転勤前の最後の水上標的射撃訓練の機会に、砲術長から艦長に、次回の射撃訓練では砲術士に射撃指揮官をやらせたいと上申していただき、艦長の粋な計らい(?)で最初で最後の射撃指揮官を体験することになりました。
当時は人一倍、視力が良かったので、それまでの射撃訓練では射撃指揮官補佐として弾丸の着弾位置をばっちり見届けて、左右のずれ、遠近のずれを見極めて射撃指揮官に伝えることができていたので、自分なりに自信を持って臨んだのですが・・・
その艦の射撃指揮装置は、米軍が太平洋戦争中に作ったアナログ式のMK(マーク)-63型という、当時でも古式ゆかしい部類の指揮装置で、射手と呼ばれる狙い手が、指揮装置と連動する望遠鏡で目標を追尾する光学照準方式でした。
この望遠鏡で目標の方位(角度)を追尾することにより角速度を算定し、射撃管制レーダーから得られる距離データから発砲諸元(調定値)を算出する方式で、現代のデジタル射撃管制システムに比べて遥かにアナログで射手の裸眼視力が勝負の分かれ目でした。
ということで、射撃の前日は射手の食事に一品加える等の特別待遇をしていました(笑)
射撃当日は艦橋のてっぺんに位置する射撃指揮所に陣取って、双眼鏡で僚艦が曳航する水上標的を凝視しながら、艦長の号令を、今か、今かと待っていたら、
「砲撃始めー!」、来たー!いざ!「撃ち方始めー!」と威勢よく号令しました。
「ド、ドーン」と地響きするような轟音とともに、最初の弾丸が飛び出しました。
1秒、2秒、まもなく着弾!標的を凝視する!・・・あれ?水柱が立たない!?
いくら凝視しても標的付近に水柱はない!
すると、艦橋から「撃ち方、待て!」と艦長の声!
それを聞いて我に返り、周りにいた者に確認したところ、砲弾は標的の進行方向の遥か後方に着弾したらしい。
原因は、射撃指揮装置から大砲の指向角度を調定するためのシンクロ発信~受信回路の接触不良でした。トホホ、
あの時は、発射角度が右にずれて標的の後方に着弾したから大きな事故にならなかったが、左方向にずれていたら、標的を曳航していた僚艦に命中していたかもしれない。それを想像すると、今でも背筋が寒くなります。
艦長の冷静な「鶴のひと声」に感謝したことは言うまでもありません。

(3) 大人なチームワーク
この二つの事例で、あたふたしていた私を救ってくれたのは、事態の推移を私と同じ目線で冷静に観察してくれていた人たちでした。この体験から、誰かのミスを他の誰かがリカバーできる大人なチームワークを作り上げる要件は、船の上で起きることは全て他人事ではなく自分事として傍目(おかめ)八目で観察することだと学びました。
当事者よりも第三者の方が、情勢や利害得失を正しく判断できるという意味で使われる傍目(おかめ)八目の語源は、囲碁を脇(傍目)から眺めている者は、盤面に向かっている対局者より八目も先まで手を読める、ということだそうです。ものごとを別の角度から観察していると、当事者が思いつかない妙案を発見できることがあるということでしょう。
ただし、気を付けなければならないのは、八目先など読めもしないクセに、尤もらしい無駄口を叩く輩がいるということです。自分の発言に責任を負う意思も気概もない野次馬の妄言に惑わされてはいけません。それを回避するには、その相手のスキルを日頃から把握しておくことです。

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3 「待てっ!」は厄介

ここまで、私自身の黒歴史を披露して「待てっ!」の効用についてお話しましたが、うまく行く場合ばかりではありません。
ここからは、「待てっ!」と止める側と、止められる側のエピソードを紹介し、双方の立場で「待てっ!」が厄介な理由についてお話します。

(1) 「待てっ!」にまつわるエピソード
  ア 「待てっ!」と言えなかった人たち
    先ずは、「待てっ!」と制止できなかったエピソードを二つ紹介します。

    (ア) 衝突を止められなかったソーナー員
       前回の投稿では、アメリカの原子力潜水艦が深度50 メートルから浮上しようとして、日本の漁
       業実習船を船底から衝き上げ、沈没させた事件を採り上げました。が、心ならずも今回は、海
       上自衛隊の潜水艦Sが貨物船の船底に衝突した事件を採り上げることになってしまいました。
       潜水艦が全没深度から潜望鏡を海面に出せる露頂深度に深度変換する際の危険性については、
       前回投稿時に説明しましたが、今回取り上げる潜水艦Sは、露頂前の捜索ルーティンに従って
       パッシブソーナーで水上目標の有無を確認後、安全と信じて露頂深度に上昇しながら、貨物船
       に衝突してしまいました。
       国交省運輸安全委員会から発出された船舶事故調査報告書によると、原因は少々ややこしいの
       ですが、簡単に言えば、潜水艦Sから見て同じ方向に居た2隻の船の音源を一つの船から放射
       されていると勘違いした、ということです。自分たちの都合を最優先したために大事故を起こ
       した米原潜に較べると、情状酌量の余地はあるかと思いますが・・・単なる身贔屓か?
       潜水艦Sの艦長の立場における「危険の芽」を探れば、
       ① 同じ方向に2隻の船舶が存在していることを知らなかったー無知
       ② 同じ方向に2隻の船舶が存在することを確認しなかったー不注意
       ③ 異なる船舶からの音源か否かの判断をソーナー員に任せたー人任せ”
       ということで、この事件も「無知に不注意、人任せ」に端を発していたものと思われます。
       これだけなら、今回テーマの「待てっ!」の出番はないですが、事故調査報告書によると、露
       頂前のソーナーによる全周捜索に当たっていたソーナー員Aは、貨物船の音源方向から聴こえ
       て来る音が変化したことに気付きました。しかし、彼は同方向の音源の移動傾向に変化がない
       ことから、潜水艦S自身が捜索のために変針した影響によるものと思い込み、緊急性及び重大
       性のある状況の変化ではないと判定した、とあり、ここに「待てっ!」の出番が潜んでいまし
       た。
       艦長以下全員が、露頂に備えて準備を進めている緊迫した状況で、聴こえて来る音の変化を感
       じ取りながら報告しなかったソーナー員は、事故が起こった瞬間に「しまったー!」と悔いた
       ことでしょう。
       彼は、報告を怠ったのではなく、「待てっ!」と声を上げるだけの自信を持てなかったのだと
       思います。全てのことが露頂に向けて進められている最中、それほど確かとも言えない変化だ
       けで、自分が露頂作業を止めてしまうことを躊躇したのだろうと思います。

    (イ) 艦長を「裸の王様」にしてしまった乗員
       もう一つは、どこのメディアにも取り上げられることのなかった軽い話題ですが、厳格な上下
       関係で成り立っている護衛艦で実際にあった少々ユーモラスなエピソードです。
       時は半世紀前。護衛艦Mの艦長は、南太平洋での洋上慰霊祭を執行するべく、この日のために
       誂えた夏季礼装に着替えて、参列者が整列待機している飛行甲板に向かいました。途中、通路
       で艦長とすれ違った乗員Bは、艦長の肩に着いている筈の肩章(階級章)が着いていないことに
       気付きました。が、あの厳格な艦長がそんなミスを犯す筈がないという思い込みから、自分ご
       ときが指摘するのは畏れ多いという無用な忖度をして、そのまま敬礼して通り過ごしました。
       そうとは知らない艦長は、そのまま厳粛な面持ちで式台に登壇した途端、皆の視線が自分の肩
       口に集中していることに気付き、その刹那、肩章を着け忘れてしまっていることを覚りました
       。慌てて艦長室に取って返しましたが、時すでに遅し、でした。
       あの後、あの艦長が、途中ですれ違った時に「待てっ!」と呼び止めなかった乗員を不忠なヤ
       ツ!と逆恨みしたであろうことは想像に難くありません(笑)
       このように「〇〇さんが間違えるはずがない!」という思い込みは、危険の芽の一つ「人任せ
       」の第一歩なので気を付けましょう。
       以上、ここに挙げた二つの事例は結果の重大さは全く異なりますが、潜水艦Sの例も護衛艦M
       の例も、下位の立場の者が「待てっ!」を躊躇したために、上位の立場の者を「裸の王様」に
       してしまったと言わざるを得ません。
       二つのエピソードはいずれも、下位の者にとって「待てっ!」と発することは、一念発起しな
       ければ成し遂げられない難題であることを示唆していると言えます。

  イ 「待てっ!」を遠ざけた人たち
     次に、世界史的にも有名な3人の海軍提督の「待てっ!」にまつわるエピソードを紹介します。

    (ア) 「待てっ!」を無視して落命したステパン・マカロフ
       日露戦争当時のロシア太平洋艦隊司令官ステパン・マカロフ中将は、常に指揮官先頭をモット
       ーに陣頭指揮に当たり、飾らない人柄と相俟ってロシア海軍の至宝と言われた有能な提督でし
       た。
       1904年(明治25年)4月13日、ロシア海軍の旅順基地沖で哨戒していたロシア駆逐艦が日本の駆
       逐艦に撃沈されたとの報告を受けたマカロフ司令官は、即座に旗艦「ペトロパブロフスク」に
       乗り込み出撃しましたが、旗艦は日本軍が敷設した機雷に蝕雷し沈没、敢え無く落命してしま
       いました。実はこの時、出撃前に次席司令官から、敵機雷に蝕雷の恐れがあるので出撃を見合
       わせるよう進言されたのですが、マカロフ司令官は生存者の救助と日本駆逐艦の追撃のため、
       出撃を優先したのです。
       いち早く生存者を救おうとする思い遣りと、指揮官としての闘争心が、次席司令官の「待てっ
       !」という進言に耳を貸さず、マカロフ司令官の命を奪ったと言えます。
       マカロフ司令官の例は、「待てっ!」が奏功する条件として上位者の寛容性、受容性が必須で
       あることを示していると思います。

    (イ) 「待てっ!」を回避するために猛訓練を強いた東郷平八郎
       同じ日露戦争当時、雌雄を決する日本海海戦の半年前の1904年(明治25年)12月23日、ロシア海
       軍のバルチック艦隊がバルト海を出港したとの報告を受けた明治天皇から、バルチック艦隊と
       の戦いの見通しについて尋ねられた連合艦隊司令長官東郷平八郎大将は、「誓って敵艦隊を撃
       滅し、宸襟(しんきん=明治天皇の御心)を安んじ奉ります(ご安心いただきます)」と奉答しま
       した。
       日本国の存亡を賭けた決戦を前に、東郷司令長官がこれほどまでに力強い返事をした背景に
       は、自身の作戦計画を練り上げて、それに応えるべく将兵を鍛え上げれば必ず勝てるという
       強い信念と、斯くなる上は準備に万全を期して天皇にさえ作戦上の「待てっ!」を発する余
       地を与えない、という堅い覚悟があったと考えられます。
       そして、決戦の直前まで有名な「月月火水木金金」の猛訓練によって全将兵のスキルアップを
       図って大海戦に臨み、世界の海戦史に残る完勝で国を救ったのはご存知のとおりです。
       東郷司令長官の例は、周りから「待てっ!」と制止されるのを避けるためには「天は自ら助け
       る者を助ける」と信じ、徹底した準備と覚悟が不可欠であることを示していると思います。

    (ウ) 「待てっ!」を待っていた山本五十六
       真珠湾奇襲による太平洋戦争開戦3カ月前の1941年(昭和16年)9月27日、日独伊三国同盟締結に
       当たって、対米戦の見通しについて近衛文麿首相から問われた連合艦隊司令長官山本五十六大
       将は「是非にと言われれば、半年や1年はずいぶんと暴れてご覧に入れます。しかし、2年、3
       年となっては、全く確信は持てません」と答えており、東郷司令長官のような身命を賭し使命
       を完遂するという強い信念は感じられず、自分の考えを述べながらも、近衛首相が途中で「待
       てっ!」と声を掛けてくれるのを期待していたように感じられます。
       山本司令長官の例は、指揮官とか上位の立場にある者であっても、周りからの「待てっ!」を
       切望することがあること、そして、その思いは相手にはなかなか通じないことを示していると
       思います。
       なお、ここに紹介した3人の提督の事例は、あくまでも「待てっ!」にまつわるエピソードで
       あり、司令官としてのそれぞれの能力や業績を貶める意図は毛頭ないことをおことわりしてお
       きます。

(2) 「待てっ!」が敬遠される理由
  ア 有難いけど鬱陶しい
    先ず一般的な話として、「待てっ!」と止められた側が素直に受け容れることのできる相手をランク
    付けすると、以下の順になると思われます。
    1位:自分よりもベテラン
    2位:自分と同等のスキルレベルの者
    3位:後輩や初心者
    後輩や初心者から「待てっ!」と止められたら、私自身もそうですが、鬱陶しいとか、プライドを傷
    付けられたと感じる人は、少なくないのではないでしょうか。
    これに対して、「親の小言と冷や酒は、後でじんわり効いてくる」ではありませんが、「待てっ!」
    と止められた後にしみじみと有り難みを感じる相手のランキングは、以下の順になるのではないで
    しょうか。
    1位:期待していなかった後輩や初心者
    2位:自分と同等のスキルレベルの者
    3位:自分よりもベテラン
    二つのランキングを見比べると、止められる側が「待てっ!」を敬遠する理由は、「鬼神は敬して遠
    ざけよ」に似た感情で、後輩や初心者に救われるのはありがたいが、プライドを傷付けられるのは避
    けたい、ということに集約されるように思えます。

  イ 止められる側の思い
    先に挙げた3人の司令官や、潜水艦Sや護衛艦Mの艦長のエピソードから、止められる側が「待
    てっ!」の恩恵にあずかれなかった理由を整理してみると、
    ① (マカロフ司令官がそうであったように)後輩や初心者の進言を率直に受け容れない。
    ② (東郷司令長官がそうであったように)過剰な責任感を発揮するあまり、周囲に過大な負担を強い
     る。
    ③ (山本司令長官がそうであったように)自分の立場に拘わり過ぎるあまり、周囲に本音を伝えない。
    ④ (潜水艦S艦長がそうであったように)報告すべき事項をしっかり徹底せず、人任せにしてしまう。
    ⑤ (護衛艦M艦長がそうであったように)周囲が進言を尻込みするほど、威圧的な態度を取ってしま
     う。
    といったことだったろうと思います。

  ウ 止める側の思い
    これまでに例示したエピソードから、止める側にとって「待てっ!」が重荷である理由を整理してみ
    ると、
    ① (潜水艦Sソーナー員がそうであったように)自分の判断に自信を持てない。
    ② (潜水艦Sソーナー員がそうであったように)判断を誤って責任を問われたくない。
    ③ (護衛艦M乗員がそうであったように)自分の知識に自信を持てない。
    ④ (護衛艦M乗員がそうであったように)不用意なことを言って、後で叱責されたくない。
    といったことだったろうと思います。
    以上、止められる側と止める側の双方が「待てっ!」を敬遠する理由を列挙しましたが、いずれの立
    場も「無知に不注意、人任せ」という「危険の芽」3点セットに加えて、目の前の事態から目を逸ら
    す「無責任」と「無関心」が絡み合って、「待てっ!」と言わず、言わせず、やり過ごしたいという
    ネガティブな思いが働いていると言えそうです。

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4 「待てっ!」で艇を救うために

自分たちの艇を「待てっ!」が有効に機能する船にするためには、「待てっ!」と発する側が勇気を持てば良いというだけではなく、「待てっ!」と言われる側が広い度量を持てば良いというだけでも足りません。
必要なのは上下左右、誰でも「待てっ!」と言える環境を整えることです。

(1) 「待てっ!」を機能させるための心掛け
  これまでに紹介した「待てっ!」エピソードから導き出せる心掛けるべき事項は、

  ア 止められる側
    ① (マカロフ司令官を反面教師として)クルーからの助言に謙虚に耳を傾ける。
    ② (東郷司令長官を反面教師として)クルーの責任分担を明確に指示して、周りに過度の従属を強要し
     ない。
    ③ (山本司令長官を反面教師として)クルーに率直に本音を伝える。
    ④ (潜水艦S艦長を反面教師として)クルーの報告を自分事として咀嚼する。
    ⑤ (護衛艦M艦長を反面教師として)クルーから敬遠されないよう、健全かつ良好な関係維持に努め
     る。

  イ 止める側
    ① (護衛艦O艦長を手本として)次に起こる事態を予測しながら冷静に推移を観察する。
    ② (護衛艦O艦長を手本として)クルーのスキルをしっかり把握して、必要な時には躊躇なく介入す
     る。
    ③ (潜水艦I油圧手を手本として)いつでも担当者に取って代わる備えをしておく。
    ④ (潜水艦I油圧手を手本として)相手が誰であっても、艇を救うために言うべきことを言う。
    ⑤ (潜水艦Sソーナー員を反面教師として)判断に迷った時こそ、艇を救うために言うべきことを言
     う。
    ⑥ (護衛艦M乗員を反面教師として)正常か異常かを瞬時に判断できる見識を身に付ける。

  ウ クルー相互
    おしまいは、クルー同士が相互に心掛けるべきことです。
    ① 野次馬根性を排して、岡目八目をリスペクトする。
    ② 他の人の意見に耳を傾ける雰囲気の醸成に寄与する。
    ③ 相手のスキルや個性(癖?)を理解し、尊重する。
    ④ 自身のスキルや個性(癖?)を相手に理解してもらうコミュ力を身に着ける。
    これらのことを実践することによって、互いに理解を深め、「危険の芽」である無知、不注意、人任
    せから脱却することができます。

(2) 「待てっ!」を機能させるための推奨事項
  最後に、それぞれの経験やポジションにおける推奨事項は、

  ア 経験別
    古来海軍では、乗艦年数の長さを「味噌汁のトン数」と表現し、「貴様と俺とでは味噌汁のトン数が
    違う」といった具合に使っていました。ここでは、皆さんのヨットでの「味噌汁のトン数」に応じて
    「待てっ!」を実のあるものにするための推奨事項を挙げてみます。
    ① 自分がベテランと自認している人は、日頃から威厳の保持と親しみ易さのバランスに気を配り、新
      米メンバーが「待てっ!」と発するのを躊躇しない程度の寛容性を持って接する。
    ①―1 その中でも大ベテランは、たまには茶目っ気を発揮して、わざと突っ込みどころを提供する役
        者になる。
    ①―2 中ベテランは、気負い過ぎて、周りに無用なプレッシャーを掛けない。
    ①―3 小ベテランは、上下の狭間で遠慮して、言うべきことも言わない無口な貝にならない。
    ② 自分が新米と自覚している人は、船の上では何事も自分事として観察し、何かあったらいつでも
     「待てっ!」と声を掛けられるように肝っ玉を据え、鶴と同じくらい大きなひと声を発せられるよ
     うに喉のケアをしておく
    ②―1 その中でも一番新米は、空いた時間をスキルアップに充てて、一日も早くみんなの話について
        行けるように勉強する。
    ②―2 中新米は、スキルに自信を持てるまで積極的に経験を積み重ねる。
    ②―3 古い新米は、日頃の作業を一つ一つ確実にこなして、一日も早くベテランと呼ばれる域に達す
        るよう研鑽する。

  イ 全員共通
    乗艇したら即、いつ「待てっ!」が掛かっても即応できるように、常に全員が以下の3点を心掛けて
    おく。
    ① 「待てっ!」と言われた後に、嫌そうな顔をしない。
    ② 「待てっ!」と言った後に、どや顔をしない。
    ③ 「待てっ!」と言う時は、全員に聞こえる大きな声(鶴のひと声)で発唱する。

  ウ (敢えて)艇長
    甚だ僭越ですが、おしまいに艇長の重責を担う人の推奨事項を挙げさせていただきます。
    文頭で触れた2001年にJSAFから国交省に宛てた小型船舶船長免許制度新設の提言は、日の目を見る
    ことなく今日に至っており、当時、JSAF提言者が提起した「たとえ共同オーナーであっても実際に乗
    る時には艇長は1名決められるべき」という案件も、「免許取得者より下級資格者の方が有能である
    場合が存在する」という案件も、法規的には何も解決されてはいません。今後、この問題が何らかの
    形で解決されるまでの繋ぎ対策として、艇長となられる方には以下の事項を推奨したいと思います。
    ① 乗艇前に、その日、艇長としてイニシアティブを執ることを宣言する。
    ② 出航前に、当日のセーリングの趣旨、行き先等に関する自分のプランをブリーフィングする。
      ※伝えなければクルーのサポートも期待できない。
    ③ 自艇におけるスキル審査基準を設けて、クルーのスキルを把握しておく。
    ④ スキル審査合格者に対しては、徹底してリスペクトし、軽々にマウンティングまがいの行為をしな
      い。
    ⑤ スキルが少々物足りなくても、船を壊したり、人にケガさせたりしなければOK!くらいの寛容さ
      (緩さ)をもって接する。
    ここまでに挙げた諸々の心掛けや推奨事項は、どれもごく当たり前のことと思います。クルー全員で
    これらのことを自然に行える船になれたら、咄嗟の事態に遭遇しても、誰かが自然に「待てっ!」と
    ひと声発して自分たちの船を救うことができるでしょう。

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おわりに

本稿では、セーリングを楽しむために、クルー一人一人がいざ!という時に「待てっ!」と発することのできるスキルと心構えを身に付けておくことが肝要!と唱えてきました。しかし、「待てっ!」と止める側のプレッシャーや、止められる側のプライドなど、一歩間違えれば気まずい関係になりかねないため、皆で楽しもうとするヨットで、娯楽と安全対策の折り合いを付けることは難しいのも事実です。
以前、一緒に乗っていたベテランの女性セーラーが「レースでは、勝つという共通の目的に向かってチームとして共同作業をするのだから、同じ船上のクルーは対等」と言うのを聞いたことがあります。彼女の対等発言は、全員が一定のスキルを備えたクルーを前提としていたのでしょうが、レースを楽しむためのヨットとは言え、皆が対等な立場では「船頭多くして船、山に登る」の愚を犯しかねない危険な考え方だと直感しました。
安全に航海するには指揮命令系統の確立は欠かせませんが、艇長とクルーの信頼関係とか、クルー一人一人の自覚とかスキルアップが必要と言うと、そんな堅いこと言わないで、できる人ができることをやれば良いではないか、という声が聞こえて来そうです。しかし、それだと、危険を回避するための指揮命令系統の一端を担える人=シーマンはいつまで経っても育ちません。
ちなみに我がOmooでは、初めて乗る時から「クルーを目指す!」と明言する人は稀で、最初はゲストとして迎えて、回を重ねながら徐々に習熟するパターンが多いです。このパターンの場合、その人はいつゲストからクルーになるのか?甚だ不明瞭というのが実情です。そこで、新たに加入してくれた人にOJTとして6カ月以内に艤装を始めとする基礎的事項をマスターするようお願いして、早期のシーマン化に一定の成果を上げています。
因みに、潜水艦では know your boat といって、見習い期間中に自分の艦の隅々まで調べ上げることを義務付けられますが、この言葉の中には、何処にどんな乗員がいて、どんな仕事をしているのか、自分の仲間を知れ、ということも含まれています。
これから先、あなたの艇で、あなた自身が「待てっ!」と叫ばなければならない事態に遭遇しないで済むことを切に願いますが、千変万化の海は、全員が熟達するまで待ってはくれません。運悪く次の出航で、雨、風、波、うねりに翻弄される事態に遭遇するかもしれません。船としては、何時その時が来ても良いように、初心者には一日も早く初心者から脱却する努力が求められ、ベテランには初心者の努力をきちんと評価して認める寛容さが求められます。その準備、態勢が整っていないと、いざ!という時に「あ、あ、あー・・・」とか「なにやってんだよー」で終わってしまい、航海ではなく後悔することになるでしょう。
そうならないために一日も早く、新しいクルーを迎えた時に説明するための自艇の「待てっ!」ポリシーを策定し、名実ともに風通しの良い艇になるよう諸事を進められることをお勧めして、結言とさせていただきます。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました <(__)>

親しき仲こそ「待てっ!」活かせ

ここまで辛抱強くお読みいただけた方は是非、マカロフ、東郷、山本の3人の提督や、潜水艦S、護衛艦M、潜水艦I、護衛艦Oのエピソードに思いを馳せながら、もう一度「咄嗟の対処 ケーススタディー」にチャレンジしてみてください (^^;

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