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EYC通信 #7

随筆「海の言葉」⑤“BERTH”

CHAPTER5“BERTH”

“BERTH”
もう随分昔の話ですが、銀座の東、浜離宮前の堀に、浮桟橋が何本か突き出して、ヨットが十隻ばかり係留してありました。堀端の二階建てのクラブハウスには大きな字で“GINNZA BIRTH”と書かれております。
「銀座誕生」とは何事であろうかと首をかしげたのですが、何のことはない、これは“IGNZA BERTH”つまり「銀座泊地」のミススペルでした。
考えてみれば、“BERTH”なる語は、船に関係する者にとっては、きわめてありふれた言葉ですが、一般の方々にはほとんど馴染みのないもので、ペンキ屋さんが間違えても仕方がありません。

一般に、“waiting for berth“「バース待ち」とか、“direct on berth”
「直航接岸」などのように、“BERTH“は特定の荷役場所を指す場合に多く使われます。
「バース待ち」中の停泊場所は普通は「沖待ち錨地」“ANCHORAGE”、
や「ブイ待ち」“BOUY”などの語を使います。
しかし本来は、“BERTH”なる語は、係留方法や荷役の能否などには関係なく、とにかく船が停泊する場所の総称なのです。
“a safe(foul)berth”と言えば、「安全な(危険な)停泊場所」であり、“ships on the berth”は「停泊中の船」です。

“BERTH”の元来の意味は、“SEA ROOM”つまり「水面における余地」でありました。
港内や海峡などでは、他船や障害物などをかわす充分な広さ(距離)
をとることが必要ですが、これを“give a wide berth to(a rock)”「(岩礁と)充分な距離を保つ」などと表現します。
“keep a wide berth of(Mr. A)”は、「(Aさんを)敬遠する」ことを意味します。
              ⚓
船の居住区で“BERTH”と言うと、もともとは高級船員の部屋のことでした。それがだんだんと変わって、一般的な「寝台」「寝場所」となり、“BUNK”「寝棚」や、単にハンモックを吊る場所までも“BERTH”と呼ばれるようになりました。
これが更に転じて、「陸上での宿泊場所」や、世俗の「地位」や「職業」のことにも使われます。
船内で、“A SNUG BERTH”と言えば、「(あまり働かないで済む)楽な勤務」を指すそうです。
              ⚓
船屋として忘れてはならない言葉に“BERTH TERM”があります。
積荷や荷揚げの際には、船艙のなかに“STEVEDORE”「船内人夫」が入って、“STEVEDORING”「船内荷役」を行います。このための費用が“STEVEDORAGE”「船内荷役費」で、俗に「ステベ賃」と呼ばれます。運送契約では、この「ステベ賃」が荷主側の負担なのか、あるいは船会社の負担なのかが、重要な条件となります。
不定期船の場合は、“FREE IN AND OUT(F.I.O.)”で、ステベ賃は本船側フリー、すなわち荷主持ちとすることが多いのです。
定期船に積む雑貨の場合には、ステベ賃はすべて船会社負担で、これを“BERTH TERM”と呼びます。従って“to place a ship on berth”とは「定期航路に就航させる」ことになります。

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