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EYC通信 #10

随筆「海の言葉」⑧“コロッパス”

「コロッパス」

※30年以上昔のこと、横浜の貯木場で、雨の日も風の日もオンボロのオワンボートに乗って、係留してある20隻あまりのヨットの面倒をみている「ジイサマ」が居りました。
年の頃は、六十に近かったでしょうか、塩気と油で煮染めた面構えで、二言めには、「近頃の若いものは何も知らん」とのお小言。若い頃は「サイベリア丸のコロッパス」だったとの自慢話。

「コロッパス」とは“COAL PASSER”の訛りで、文字通り「石炭をパスする人」です。
燃料庫の石炭を、一輪の手押し車に積んで、ボイラーの焚口まで運ぶ役目で、新米の機関部員が必ず何年間かは汗を流す関門でありました。「コロッパス」の仕事は、石炭運びだけではありません。4時間のウオッチの最後には、「アスまき」があります。
「アス」は“ASH”即ち石炭の灰のことで、「かま」の前に掻き出した灰を「アスバケツ」に入れて、「アスウインチ」でデッキに巻き上げ、舷外に捨てます。
「アスウインチ」は極めて原始的な「手巻き式」のものでありました。

「コロッパス」を卒業して、初めて、“FIREMAN”に昇格します。
“FIREMAN”は、陸上では「消化夫」ですが、エンヂンでは「火を焚く人」即ち「火夫」で、「フィヤマン」と発音されたようです。
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さらに昇格すると、“OILER”即ち「油差し」になります。     “NO.1 OILER”は「ナンバン」で、これは今では「操機長」と呼ば
れます。
“NO.2 OILER”は「ナンプト」、“NO.3 OILER”は「ナンツリ」と呼ばれたそうですが、勿論現在ではこの名称は使われておりません。

「ドンキー」は“DONKEY MAN”の略で、“DONKEY BOILER”即ち「副缶」の担当です。
“DONKEY BOILER”は、停泊中の船内エネルギーを賄うもので、「主缶」“MAIN BOILER”に比べて小さいから“DONKEY”「ロバ」というのか、役目がパッとしないから“DONKEY”「とんま」と呼ばれるのか知りませんが、いづれにせよ小馬鹿にした名前です。
昔の“DONKEY MAN”は、かなり重要なポストだったとのことですが、今ではこの職制は無く、単に“DONKEY WATCH”「副缶当直」にその名を残しております。
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甲板部では、ビリから一番目が「ボーイ長」、ブービーが「ドバス」と呼ばれておりました。
「ボーイ長」は、日本船独特の呼び名で、とにかく「ビリ」のことです。「ドバス」は、“DUNG PASSER”の訛りです。“DUNG”とは、「汚いもの」ですから、恐らくは、その最重要業務である「便所掃除」から出た名称でありましょう。 
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日本でも、戦後石炭焚船が無くなり、「コロッパス」も姿を消しました。船内業務の合理化も進み、「ボーイ長」や「ドバス」も居なくなりました。
これと似たような日本古来の」新米水夫「かしき」(炊夫)の名称も、今では聞くことは有りません。  ※今から50年以上前

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