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EYC通信 #12

随筆「海の言葉」⑨“TYPHOON”

「TYPHOON」

熱帯地方の海上で発生する熱帯性低気圧は、しばしば大きく成長して、

最大級の暴風となります。

フィリッピン近海で発生し、南シナ海で猛威を振るい、時として日本にも上陸するのが“TYPHOON”ですが、南半球のインド洋や南太平洋で発生するものは“CYCLONE”と呼ばれ、カリブ海で発生しアメリカを襲うものは“HURRICANE”の名称がつけられております。

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“CYCLONE”は、“CYCLE”「循環」と同じ語源で、「旋風」です。

“HURRICANE”はスペイン語です。

これに対して、“TYPOON”「台風」は、中国語に由来すると思う人が多いようです。

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中国語説は、大別すると三つの説に分かれます。

第一は「大風」説です。

中国語の「大風」は、「颱風」「旋風」を意味する言葉で、発音は

“tai fung”とか“ta fung”となります。

したがって、この説によれば、中国語の「大風」が、南シナ海で大暴風に遭遇した西洋の船乗りにより、本国に伝えられたことになります。

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第二は「颱風」説です。

「颱」という字は、17世紀末の中国の文献に出てくる字で、強い風を意味し、順番としては「颱風」と「旋風」の間の強さです。

日本では漢字制限以前には「台風」ではなく「颱風」と書いておりましたので、「颱風」が“TYPHOON”の語源であると思いがちです。

しかし、「颱」の字に「風」をつけて「颱風」なる語を作ったのは、どうも中国人では無く。日本人のようです。ですから、「颱風」はむしろ

“TYPHOON”の日本語訳と見るべきでしょう。

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三番目の説は、「台湾風」です。

前述の17世紀末の中国文献は、台湾の風土誌でありますので、「台湾に特有の風」として「颱」や「颱風」の語が生まれたというのです。

しかし「台湾」は、本来は「臺灣」と書きました。「台」は、略字でも、俗字でも無く、れっきとした別字であって、ただ発音や意味が似ているために「臺」の代わりに使われるのです。

従って、この「台湾風」説も、無理な「こじつけ」の感があります。

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語源学者の間では、中国語起源説はほとんど否定されております。

通説としては、“TOUFFON”なる語が変化して“TYPHOON”になったと申します。この“TOUFFON”は、すでに16世紀末の英語の文献に「暴風」を意味する言葉として使われており、したがって、「颱」の字より一世紀以上も古い言葉です。

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更にこの“TOUFFON”の語源をさかのぼってみると、ギリシャ語の

“TYPHON”「旋風」か、或いは、アラビア語の“AL-TUFAN”「あらし」であろうと言われます。

ギリシャ語はともかくとして、アラビア語とは奇異の感を持たれるかもしれませんが、アラビア人は単なる砂漠の遊牧民ではなく、西洋人の進出などより遥かに昔から、インド洋や東南アジアへの大航海を行った海洋民族であり、海事用語でもアラビア語源のものが少なくありません。

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