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EYC通信 #13

随筆「海の言葉」⑩“霧”

「霧」

船乗りにとって「霧」は「嵐」にも劣らぬ強敵です。
濃霧ともなれば、“FOG BELL”「霧鐘」を打ち、“FOG HONE”や“FOG SIREN”を鳴らし、どうにもならなければ“FOG-BOUND”
「濃霧で立ち往生」となります。
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言葉の起源としては、「雑草で地面が覆われた」状態を指す言葉として
“FOGGY”があり、この“FOGGY”から“FOG”「霧」という言葉が生まれたのだと言われます
牧草は、初夏に刈り取ったのを「一番草」、秋になってもう一度伸びたところを刈るのが「二番草」ですが、今でもこの「二番草」のことを“FOG”と呼ぶそうです。
現在の英語での“FOGGY”は「霧のかかった」「霧の多い」ことです。
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文学作品の中では、「霧」には“MIST”がよく使われます。
“MIST”の原意は“DARKNESS”「暗黒」です。
あまり耳慣れない言葉ですが、気象学や航海用語では“HAZE”も「霧」として使われます。これは、原意は「灰色」です。
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“FOG”、“MIST”、“HAZE”の三つを比較すると、“FOG”は一番濃厚であって、また時によっては黄色などの色がつくことがあるのに対し、“MIST”や“HAZE”は、水の粒子が細かく、薄く、無色であるとされております。
「五里霧中」「疑惑の霧」のように、英語でも「霧」はよく比喩的に用いられますが、この場合でも“FOG”は「混乱」「混迷」であるのに対し、“MIST”や“HAZE”は「不分明」の感じであるようです。
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動詞としての“HAZE”は、船乗り独特の言葉です。この場合、名詞は“HAZING”となります。
これは、元来は帆船時代に船長や航海士が乗組員をことさらに酷使することでした。日本語で言えば「いじめ」とか「こみやる」ことでしょうか。
大勢の乗組員が、厳しい生活環境で、長い単調な航海をすごすのですから、不平や不満が爆発する危険が常にあります。それを防ぐためには絶えまなく仕事を命じてこき使い、くたくたに疲れさせるのが唯一最上の手段であるとされていたのです。
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この船乗りの言葉の“HAZE ”は、アメリカ海洋文学の最高傑作
“TOW YEARS BEFORE THE MAST“(R.H.DANA JR.著、1840年初版、邦訳名「帆船航海記」)によって、広く一般に紹介されました。現在でもアメリカの学生の間では、「新入生いじめ」のことを“HAZE ”と言っております。
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都市の大気汚染により発生する「スモッグ」は、“SMOKE”「煙」と“FOG”の合成語です。
同じように、“SOMKE+HAZE”=“SMAZE”とか、特に寒冷地では“SMOKE+ICE”=“SMICE”も使われます。
最近のアメリカでは、“SMOG”の代わりに“INDUSTRIAL HAZE”という名称が使われることのことです。「工業霧」とは誠に適切な表現ではありますが、なんだか弱い市民達が、工業に「いじめ」られている感じもしないではありません。

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