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EYC通信 #17

随筆「海の言葉」⑭ “FAIRWAY”

“FAIRWAY”

ゴルフの“FAIRWAY”は、コースの中央で、芝生が刈り込んであるので一目で分かりますし、日本語でも「フェアウェイ」で通用します。
ところが海事用語の“FAIRWAY”は、なかなか難しいのです。
小説などで、「航路」と訳してあるのを見かけますが、これは厳密には間違いで、「航路筋」と訳さなければ海技免許状は貰えない仕組みに
なっております。
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「航路」は、昔からの日本語で、まさに「船の通る道筋」です。
広い外洋を航海する時も、大概の船が利用する道筋、つまり「常用航路」があります。これは“ROUTE”と呼ばれます。
港湾の出入口などは、浮標などで「航路」を指定していることが多いのですが、これは“TRAFFIC ROUTE”とか“TRAFFIC LANE”と呼ばれます。「通行分離方式」もこれです。
それでは「航路筋」とは何かと言えば、これは本来の日本語では無く、英語の“FAIRWAY”を無理に翻訳した造語なのです。
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国際的な海上交通規則として、“INTERNATIONAL REGULATIONS FOR PREVENTING COLLISIN RULES“「国際海上衝突予防規則」があり、
これに基づいて日本でも「海上衝突予防法」が制定されております。
英文の国際規則の中に、“NARROW CHANNELS”における航法の規定があり、ここでは『“NARROW CHANNEL”または“FAIRWAY”では・・・“NARRROW CHANNEL”または“FAIRWAY”の右側を進行』することになっております。
ところが、これを受けた昔の日本の「海上衝突予防法」では、『狭い水道における航法』として、『狭い水道では・・・航路筋の右側を進行』することになっておりました。
つまり、表題では“NARROW CHANNELS”の“S”が無視されており、本文の前段では“FAIRWAY”が、後段では“NARROW CHANNEL”が夫々省略されております。これでは日本文だけ読むと「狭水道」と「航路筋」とは大体同じようなものだと感じられます。
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ところが、本来の英語では、“NARROW CHANNEL”と“FAIRWAY”とは、大分違ったものなのです。
“NARROW CHANNEL”とは、文字通り海面の狭い場所で、その幅は3海里以下とされております。
これに対し、“FAIRWAY”とは、海面は十分に広いが、浅瀬などの関係で船は通常その一部の狭い水路しか航行できない場所を指すのです。
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1977年7月に、「国際規則」と、日本の「海上衝突予防法」が全面的に改訂されました。“FAIRWAY”の部分については、「国際規則」は変わらなかったのですが、「衝突予防法」はこの機会に改正されました。標題が『狭い水道等』となり、本文も『狭い水道または航路筋(以下「狭い水道等」という)では・・・「狭い水道等」の右側を進行』となりました。
これで日本語でも「航路筋」が「狭水道」とは異なるものであることが、やっとはっきりしたのです。
こんなにややっこしかったのも、元来日本語に無い“FAIRWAY”を、無理に「航路筋」と訳したことに、そもそもの原因があるのでしょう。

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