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EYC通信 #20

随筆「海の言葉」⑰ “ANCHOR”

“ANCHOR”

万葉(まんにょう)の時代には、「重石」又は「沈石」と書いて、「いかり」と読ませました。
これは文字どおり、石に縄をくくりつけて海中に投じ、船を停泊させたからで、「いかり」とは「石がかり」のことだと申します。
時代が進むと、曲がった木の枝で作った「爪」に石を結んで使います。これが「碇」で、やはり「いかり」と読みます。「停泊」は正しくは「碇泊」であります。
この「爪」が「猫」を連想させたために、「木猫」の別名を生じ、更に鉄製の「爪」となって「鉄猫」となり、現在の「錨」の字が使われるようになりました。
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西洋の「いかり」も、全く同じような進化の過程をたどっております。
但し、英語の“ANCHOR”には、「固定する」とか「頼りにする」の意味もあります。建築基礎の“ANCHOR BOLT”とか、リレーの最終走者の「アンカー」などがこれで、いずれも「錨」の昨日から転じた使い方であります。
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岸壁施設が整っていなかった帆船時代には、停泊は錨泊であり、また港内や河川での操船にも、錨が様々に使われました。投錨、揚錨は全部人力でするので、用途に応じて大小の錨を使い分けることとなります。
主錨は二つあって、船首左右に備えられ、“BOWER ANCHORS”、とか“BOWERS”と呼ばれました。
右舷と左舷の錨は同じ大きさなのですが、単錨泊の場合には、なぜか、右舷錨“STARBOAD BOWER”を使うことになっており、このために、右舷錨は、“BEST ANCHOR”と呼ばれ、左舷錨は“SMALL BOWER”と呼びました。
予備の大錨は“BEST ANCHOR”の後方にあり、“SHEET ANCHOR”の別名がありました。
日常英語で“SHEET ANCHOR”とは、「最後の頼り」のことです。
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港内の移動とか、離州作業の時には、ボートで小錨を遠方に投錨し、錨索をたぐって船を動かします。
この小錨が“KEDGE ANCHOR”です。“KEDGE”とは“CATCHが転化した言葉で、錨索をたぐる作業が、網で魚を“CATCH”するのに似たからでしょう。
最近でも、小型の内航船などで、船尾に小錨をそなえたものがあり、これも“KEDGE ANCHOR”と呼びますが、勿論ボートを使って投錨するようなことはありません。               
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余談になりますが、船をタグボートなどで曳くのは“TOW”と言いますが、“KEDGING”とか、いわゆる「ロープシフト」のように、錨とか陸上のビットなどに結んだ綱を、本船の側で引っ張って船を移動させることを、“WARP”と言うのだそうです。
“WARP”とは「曲げる」「ゆがめる」意味で、SF宇宙旅行の世界での「超空間航法」を指す新語(と言うよりも空想語)ですが、この言葉を発明(?)した人の頭の中には、海事用語の“WARP”があったに違いありません。

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