ロングクルージング手帳
今回は、江の島ヨットクラブ会員菊地様から、九州方面へのクルージングの記録を「ロングクルージング手帳」として寄せていただきました。
2021年、今年の春もまたオリンピック準備のため、江の島に係留する艇は皆外に出ていくことになりました。期間は4月から8月下旬まで。行先は横浜ベイサイドマリーナやシーボニアなど県が手配する近郊のマリーナ、あるいは本人の希望ならどこでも好きな所へ行ってくださいというお話で、我らが艇ベラミ(オセアニス40Feet)は、前年に引き続き九州に向かおうということになりました。
4月から8月下旬までのおよそ5ヵ月間の長期クルージング。冬の寒いうちからプランの立案、船底やエンジン、オイル、バッテリー、ハリヤードやシート、ドジャー、オーニング等の点検、補修、交換など艇の整備は怠りなく、老若交えたクルーの確保、など皆で準備を始めました。とはいえ5ヵ月のプランを事前に全部作るなんて不可能。全体的にはおおよその行程と、まずは出港後の当座のコース、停泊地の確保などを優先します。
さて、こういう長期、あるいは小笠原や沖縄など長距離のクルージングに出かけるとき、計画立案に何が必要か思いつくまま言葉を上げてみましょう。
時季、月日、メンバー、行先、距離、行程、自艇の艇速、潮流、停泊地(港、漁港、マリーナ)。行先に風呂や温泉はあるか、スーパー、食堂、民宿やホテル、ガソリンスタンド、現地でのレンタカーの手配、泊地での名所や旧跡…。まず最初に考えるのは、時季と行先でしょう。極寒の冬は忘れるとしても春先もまだ寒い、6月は梅雨が始まる、8月9月は台風のシーズン、などと海の上はなかなかベストがありません。行き先が南なら少々寒い時季の出港も可能ですが、北に向かう場合たとえ春先でもしっかり防寒具の用意が必要です。
行先は最終目的地と当座の目的地があります。しかし行先が小笠原だとしたら、当座の寄港地はせいぜい八丈島。ならば江の島を出て、あとは600マイル(およそ1000キロ)をひたすら走り切るしかありません。雨が降ろうと大波に叩かれようと父島までは昼夜休まず4日か5日。周りはただ一面の海で風景は単調な波ばかり。でも航海途中、突然海面に白波が立ち海中からぼこぼこと突き出るベヨネーズ列岩が見えたり、大海原のど真ん中に小さいながら堂々とそびえる岩礁スミス島があったりと、小笠原クルージングでしか見ることのできない絶景もあるのです。
さて、今回我々の九州クルージングではこんな行程表を作ってみました。
レグ1 2021年3月18日~3月20日
江ノ島―那智勝浦(フィッシャリーナ那智)
220.4NM 36.7Hours (低速6Knotsで試算)
レグ2 2021年3月27日~3月29日
那智勝浦―大分国東(マリンピアむさし)
248.5NM 41.4Hours
レグ3 2021年4月12日~4月18日
国東(マリンピアむさし)―39.8NM(6.6hours)―佐伯(佐伯セーリングクラブ)―40.3NM(6.7hours)―八幡浜―21.9NM(307hours)―宇和島(さきいや広場前桟橋)―33.3NM(5.6hours)―愛南(あいなんかわうそ村海の家)―56.7NM(9.5hours)―日向(細島港)―35.4NM(5.9hours)―宮崎(宮崎サンマリーナ)
まだこの先もありますが、とりあえず省略。
こうしてある程度詳細に行程表を作ります。この時、レグ2の那智勝浦―大分国東は潮流の速い豊後水道を通るので、電子海図ニューペックや潮流潮汐情報で潮の流れや速さを事前に調べ、その海峡の通過時間を調整する必要があります。各寄港地には事前に電話をして、入港の可否、港内のどこへ泊めるか、おおよその入港時間など打ち合わせをしておく必要があります。その時ついでに、風呂やスーパー、給油場所、レンタカーなどの情報も聞いておくといいでしょう。
ちなみに今回の現地情報では、レグ3の最終地宮崎サンマリーナの入港口に砂が積もって浅いので、入港は当日満潮時刻の昼12時過ぎか夜8時ごろでないとヨットは入港できないという。細島から宮崎までは平均6ノットで走っても6時間。夜の入港は危険なので昼には宮崎に到着したい。当日は霧で視界不良。ついでにGPSも不調。万一を考え、風や潮を見ながら、日向を夜明けを待たず出港したのです。
今回のレグ1、レグ2、レグ3は、ほぼ行程表の予定通り走りました。レグ1,2はかなりハードなデイ&ナイトクルーズで、寒く厳しい海の中を若者たちが突破してくれました。レグ3は70歳越えの年寄り3人と50歳台1人の計4人。穏やかでのんびりセーリングになるかと思いきや、天候に恵まれず、挙句にGPSの不調もあり、結構タフなセーリングをエンジョイしました。
べラミは今まで沖縄や、小笠原、遠いところでは南大東島、そして本州一周などあちこちクルージングを重ねてきました。べラミ以外では地中海やタヒチのクルージングも経験しました。クルージングはヨットの醍醐味です。大海を夢み、今後ももっと海の旅を楽しんで行きたいと思います。
EYCメンバー
べラミ艇
菊地浩司