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EYC通信 #26

随筆「海の言葉」㉒“DEADWEIGHT”

 国際博覧会の某国の展示場で、船の写真の説明に「当国の外航船腹量は〇〇万死重屯」とあるのを見て、「ハテナ」と考えました。勿論これは“DEADWEIGHT TON”「載貨重量屯」の誤訳だとは思いましたが、それにしても「死重」とは聞きなれぬ言葉なので、念のために辞書を調べてみますと“DEADWEIGHT”=“DEAD LOAD”で、「死重」との訳語があり、これは車両自体の重量、つまり「自重」を指す言葉だそうです。

 ご承知の通り、船の“DEADWEIGHT”とは、“FULL DISPLACEMENT LOADED“「満載排水量」から“LIGHT DISPLACEMENT”「軽荷排水量」を引いたもので、言わば“WEIGHT CAPACITY”「積載可能重量」であります。この“DEADWEIGHT”から、燃料や清水など運行上必要な持ち物の重量を差し引いた残りが、「貨物積載量」となります。したがって“DEADWEIGHT”は、商売の面から見れば「生きた重量」であり、決して「死重」ではありません。それでは、何故「生きた重量」を「死重」などと呼ぶのでしょうか。

 海事用語の中には、“DEAD”のつくものが沢山あります。“DEAD-EYE”は三つ目滑車です。滑車と言っても、回転する心車(シーブ)が無いので、“DEAD”と呼ばれるのでしょう。“DEAD-LIGHT”は、ガラス窓の上の「遮光蓋」と、厚いガラスの埋め込みの「明り取り」の両方に使われます。“DEAD-FREIGHT”は、「不積運賃」。船が海上を進む時、船体近くの海水が船に連れられて動きます。これを“DEAD-WATER”と呼びます。タンクの中の「引き残り」を“DEAD WATER”とか“DEAD OIL”と言いますが、これは正しい英語ではないようです。“DEAD WIND”とは、“DEAD CALM”「無風」のことかと思ったら、“HEAD WIND”「逆風」だそうです。昔の帆船乗りには恨めしいものの代名詞だったのでしょう。

 さて、本題の“DEADWEIHT”ですが、その語源には二つの説があります。その第一は、「満載重量から死重を引いたもの」と言うべきなのを、省略して「死重」となってしまったというものです。言語学の先生によれば、言葉と言うものは、しばしばこの様な省略法によって矛盾した変化をたどるのだそうです。

 しかし、私にとっては、第二の説の方がほんとうらしく、また面白く感ぜられます。これは“DEADWEIGHT”は、“DEDUCED WEIGHT”「推論された重量」だとするものです。“DEAD RECKONING”は「推測航法」ですが、元来は“DEDUCED RECKONING”「船位推算」であります。これが、“LOG BOOK”「航海日誌」の紙面不足のために、“DED RECKONING”と省略され、更に変わって“DEAD RECKONING”となったものです。“DEADWEIGHTもこれと同じで、元来”DEDUCED WEIGHT“だったのが、“DED WEIGHT”から、“DEADWEIGHT”となってしまったと言うのです。

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